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FONT KNOWLEDGE
Font Knowledge
文字の知識部会
主査 田原 恭二
凸版印刷株式会社
味わい豊かな文字の世界
普段あまり意識することのない文字のかたち=書体には、さまざまな「読ませる工夫」が詰まっています。それは、大げさに言えば時代を映す鏡なのかも知れません。
なぜなら、タイプフェイスデザイナーは、自らの技能と感覚の限りを尽くして、自らが見る時代の精神をかたちにし、タイポグラファーやエディトリアルデザイナーは、数多あるフォントの中から、これまた自らの技能と感覚の限りを尽くして、自らが見る時代の精神を表す書体を選び取ります。そして、読者は、そのようにして表された文字の並びから、時代の精神を、肌に触れる風のかすかな匂いのように感じとっていると考えられるからです。
共有されない情報と記憶
しかし、それが時代を映す鏡だったとしても、共有されない情報は人々の記憶に残りにくいものです。書体の本来の目的から見れば、個々の書体が作られたプロセスへの関心は低く、開発に携わる側でさえ、それを共有し記憶することに対しては、これまであまり注意が払われてこなかったかも知れません。
そこで、文字や書体開発にまつわる情報を可能な範囲で詳らかにして共有し、情報交換などを行うことによって、業界に新たな価値が生まれるのではないかと考えました。
例えば、
- その書体の開発に至った背景やコンセプト、デザインのポリシーなどについて、当事者から話を聞く機会があったらどうでしょう
- 書体開発中に発生した課題や、その課題に対する意思決定、方針や対応策などについて共有する機会があったら、類似課題に直面したときに参考になるかも知れません
- あるいは、書体に関する技術的なトレンドやマーケットの情報について意見交換ができたら有益ではないでしょうか。
当協議会こそ最適な環境
幸い、当協議会には日本を代表するフォントベンダー各社が加盟しています。これは、日本語の文字やフォント開発に関するさまざまな経験をお持ちの方が、各社の枠組みを超えて集まれる会ということでもあり、上述のようなアクションを起こすには、最もふさわしい環境ではないかと考えます。
個々の知識を当協議会の枠組みで持ち寄り、業界全体の知識としてレベルアップを図ることによって、当協議会の発展にもまた寄与していきたいと思っています。
文字の知識部会の活動内容
① 書体見本情報誌「文字のかたち」の企画・制作
- 文字やフォントに関する情報をわかりやすく解説した特集記事
- 当協議加盟フォントベンダー各社の書体を俯瞰できる書体見本
といった二つの誌面から構成される情報誌を、議論しながら企画・制作を行います。2019年には次のような内容の「文字のかたち 明朝体編」を企画・制作しました。
[特集記事]
- 明朝体の文字のかたち(同じ文字なのにどこか違う明朝体の解説)
- 日本語書体のいまとこれから(各社スタッフによる今後の開発予定など)
- データで文字を見てみよう(各社の明朝体のかたちを数値化して比較)
[書体見本]
- イワタ明朝体オールド/イワタ
- ヒラギノ明朝体/SCREENグラフィックソリューションズ
- 秀英明朝/大日本印刷
- 凸版文久明朝/凸版印刷
- 筑紫明朝/フォントワークス
- 小塚明朝/アドビ
- リュウミン/モリサワ
- モトヤ明朝/モトヤ
- 游明朝体/字游工房
- 源ノ明朝/アドビ
- MS明朝/Microsoft Corporation
- 華康明朝体/ダイナコムウェア
- IPA明朝/情報処理推進機構
[ダウンロード]
② セミナーや勉強会の企画・開催
文字やフォントに関連する知識の共有機会として、セミナーや勉強会を企画・開催します。これまで、次のようなセミナーを開催してきました(一例)。
- アップルの日本語文字セット・フォントの歴史
- 金属活字と明治の横浜
- 秀英体 ~DNPの一丁目1番地~
- 凸版文久体 航海記
- モトヤ書体について
- 「みちくさ」から考える和文書体における異体字と発動条件について
- フォントを計るーデザイン研究の立場から