CITPCの15年

先般(2024年9月4日(水))に、コロナ禍などでしばらく途絶えていたCITPC恒例の暑気払いの会が開催された。久々に楽しい歓談はビジネス展開の話も含めて、つきることがなかった。そのおり、事務局をお願いしているエッジプラスの木村社長から、「CITPCも例年でもう15周年なんですよ」と聞かされた。そうか、もう15年か。総会の折の特別講演になるか、別個のセミナーになるかは措くとして、2025年には、何か記念になるイベントをやりたいと思っている。いい機会なので、15周年を目指して、CITPCの15年を振り返っておくのも悪くないだろう。とともに、前からいつかは書きたいと思っていた「ユニコード戦記」と「EPUB戦記」の続編への助走にもしたいし。

一念発起して、事務局の佐藤さんの手を煩わせて、昔の資料をまとめて送っていただいた。以下、その資料を掘り返しつつの、雑感。

2010年12月6日「IVS技術促進協議会」設立総会

一般財団法人文字情報技術促進協議会の前身となる「IVS技術促進協議会」の設立総会が開催された。同日、ニュースリリースも公開された。協議会の設立趣意書。

IVS技術促進協議会設立趣意書

パソコンや各種デジタルデバイス、インターネット、オンラインサービスの普及に伴い、電子出版に見られるように情報の発信者である作者と受信者である読者との距離がこれまでになく近くなっています。しかし、文字には地域、用途によって様々な字体が存在し、現在の多くのコンピューターソフトウェアではこれらを取り扱う事が出来ず、同じ文字を作者と読者が共有する事を保証する事が出来ません。

例えば、住民基本台帳、戸籍には、一般に入力、表示が出来ない字体が多く含まれ、これらの文字はデジタルデータとして広く交換出来ないのが実際です。

「書き手と読み手が同一の文字を見ている」

IVS (Ideographic Variation Sequence)は、これまで困難であった文字入力から、メール・記録媒体による情報の伝送、受信、そして情報の表示・印刷において、常に同じ文字(字体)であることを保証できる仕組みです。また、これにより歴史的・文化的資産の電子書籍化や、電子政府システムを促進するために不可欠な人名、地名の正確な表記を、国際基準に則り、クラウドコンピューティング時代に欠くことのできない相互運用性を担保しながら実現することが可能となります。

IVS技術の実装はまだ緒に就いたばかりですが、IVS技術促進協議会は、オペレーティングシステムからアプリケーションまでのIVS技術を促進することで、字体を含む文字情報の保全を可能にし、相互運用性の向上を実現するための技術啓発、参加企業間での相互運用性検証、事例紹介、そして共同マーケティングまで幅広い活動を予定しています。また、電子政府などの公共システムのオープン化へ環境づくりに対しても貢献していきます。

発起人企業・団体:

l アドビ システムズ 株式会社

l イースト株式会社

l 株式会社ジャストシステム

l 大日本スクリーン製造株式会社

l マイクロソフト株式会社

l 株式会社モリサワ

【本協議会の目的と事業】

[目的]

本協議会は、ユニコード(公的規格としてはISO/IEC 10646)では同一符号位置に統合される文字の異なる字形(グリフ)の使い分け、字体情報の保全が可能な既に標準化されているIVS (Ideographic Variation Sequence)技術についての情報共有、啓発などの活動を通じて、その技術の普及促進と既存システムとの協調に資することを目的とします。

[事業]

上記の目的を達成するため、本協議会では次の事業を行います。

  1. IVSに関する情報交換と経験交流に関する事業
  2. IVSに関する普及啓発
  3. IVSに関する相互運用性の向上に関する事業
  4. その他本協議会の目的を達成するために必要な事業
  5. 本協議会は営利を目的とする活動、事業を行わない

詳細については、IVS技術促進協議会規約(案)をご参照ください。

このアーティクルを書くために、ハードディスクを掘っていたら、設立趣意書の原稿と思われるファイルがいくつも出て来た。趣意書の原案を起草したのはどうもぼくのようだ。

この設立総会の折に提案された、役員候補の名簿も見ておこう。

「IVS技術促進協議会」 役員候補

平成 22 年 12 月 6 日 (月)

IVS技術促進協議会 発起人会

会長

三上 喜貴 (長岡技術科学大学教授、ISO/IEC JTC1/SC2国際議長)

副会長

加治佐 俊一 (マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者)

村田 真 (国際大学GLOCOMフェロー)

理事

山本 太郎 (アドビ システムズ 株式会社)

下川 和男 (イースト株式会社)

福良 伴昭 (株式会社ジャストシステム)

小林 龍生 (Unicode Consortium)

藤澤 恭平 (大日本スクリーン製造株式会社)

森澤 彰彦 (株式会社モリサワ)

事務局長

田丸 健三郎 (マイクロソフト株式会社 技術統括室 本部長)

エキスパート会員

安岡 孝一 (京都大学東アジア人文情報学研究センター准教授)

師 茂樹 (花園大学准教授)

以上

会長は、当時ISO/IEC JTC1/SC2の国際議長だった三上喜貴さんが引き受けてくださった。三上さんが会長を引き受けてくれたおかげで、IVS技術促進協議会は、スタート時点からある種のステイタスというかレピュテーションを日本の内外から認められる存在になったような気がする。副会長には加治佐俊一さんと村田真。例によって、村田真には《さん》が付かないなあ。付けると、なんだかよそよそしくなってしまってね。 この二人も、今から思うと、素晴らしい布陣だなあ、と。かたや加治佐さんが代表的なグローパルIT企業の日本における最高技術責任者だったのに対し、かたや村田真は若いころからW3CのXMLワーキンググループにグローバルなゼロックスグループを代表して日本人として唯一アクティヴメンバーとして参画し、オリジナルのXML策定に力を振るって勇名を馳せると同時に、そのころはまだ策定の最終段階にあったEPUB3のレコメンデーション化を目指して、辣腕を振るっていた。彼の悪名、おっと、勇名は、日本でよりも、むしろ、グローバルな国際標準化の専門家の間で轟いていた。他の理事やエキスパートも、業種やアカデミーにおける専門分野を超えて、単にIVSという至極専門的なIT技術の一分野に限ることなく、幅広い分野の専門家の参画者を得たことで、この協議会は、とても幸せなスタートを切ることが出来たように思う。 後に、IVS技術促進協議会は、名称を文字情報技術促進協議会と変更することになるが、このチームビルディングを見ると、その萌芽はすでにこの発足時点であったような気がする。

それにしても、IVS技術促進協議会は、どういう経緯で発足に至ったのだろうか(以下次回)。

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