ユニコードとの許諾契約

大漢和辞典を巡る特別講演

2022年5月25日、2年ぶりに対面での(ネットミーティング併用)理事会、総会が、新宿のイースト株式会社の素敵なカンファレンスルームをお借りして開催された。
その後開催された懇親会も、感染症対策には十分留意しながらも、楽しく有意義なものだった。
しかし、それよりも何よりも、総会と懇親会の間に開催された特別講演会が、素晴らしかった。
講師は、元写研の杏橋達麿さんと、元大修館書店の池澤正晃さん、そして、同じく大修館書店の山口隆志さん。お三方から、大漢和辞典の誕生と成長に係わる貴重なお話を伺えた。なかでも、杏橋さんと池澤さんのお話の双方からは、石井明朝体の字体設計理念といわゆる康煕字典体との関係が浮かび上がり、興味は尽きなかった。
今でも、当協議会会員のフォントベンダー各社には、必ず大漢和辞典が(おそらくは一セットならず)置かれているに相違ないが、大漢和辞典が、日本だけではなく東アジア漢字圏全体でも高い評価を維持している理由を垣間見た気がした。

ユニコードコンソーシアムとの契約

講演会が終わって幾日もしないうちに、Ken Lundeからのメールが届いた。このメールには、当コンソーシアムの副会長をお願いしているアドビの山本太郎さんがKenとともに骨をおってくださった”License Agreement For use of the MJ Character Information List”に、Unicode ConsortiumのPresidentであるMark Davisのサインが入った正式の契約書が添付されていた。
当協議会から会員にお送りしたお知らせを読んでいただければ、この契約の概略がお分かりいただけると思う。

お知らせ
2022年5月30日に一般社団法人文字情報技術促進協議会は、The Unicode Consortium(正式名称:Unicode Inc.)とのあいだで、『「MJ文字情報一覧表」の利用許諾契約』(License Agreement For use of the MJ Character Information List)を締結しました。
この契約は、The Unicode Consortiumが、『MJ文字情報一覧表』に含まれる情報の一部をThe Unicode Consortiumが開発し、管理しているthe Unicode Han Databaseの属性情報に取り込むことを許諾するものです。それによってthe Unicode Han Databaseの内容の改善が可能になります。具体的には、The Unicode Consortiumでは、『MJ文字情報一覧表』に含まれる一部情報を用いて、the Unicode Han DatabaseのCJK統合漢字の属性情報の追加・修正を行うことを予定しています。このことは、UnicodeにおけるCJK統合漢字の維持・管理・拡張のために用いられる情報の品質と一貫性を向上することに資するものであり、今後のUnicodeの普及促進にも寄与すると考えます。
本件は、文字情報技術促進協議会とThe Unicode Consortiumとのリエゾン関係の締結と並行して、2020年から両者のあいだで協議されてきましたが、このたび、その正式な締結に至りましたのでお知らせいたします。
文字技術促進協議会

当協議会とUnicode Consortiumは、正式なリエイゾン関係を結んでいる。
リエイゾンというのは、元々は軍隊の連絡将校のこと(正確にはliaison officer)。標準化の世界では、関係のある委員会やコンソーシアムなどの間で、情報共有を図るために相互に技術者を派遣する。
Unicodeと当協議会でも、Unicode側がKen Lunde、協議会側が山本太郎さん、ということになる。
当協議会が、一般社団法人格を取得した直後、Unicode側からリエイゾン関係の申し入れがあり、もちろん、喜んでお受けした。というか、CITPCも世界のUnicodeとリエイゾン関係を結べるようになったのだ、とある種の感慨を覚えたものだ。

大漢和漢和とUCSとの対応テーブル

じつは、Unicode ConsortiumがCITPCにリエイゾンの申し入れをしてきたのには、わけがある。ずばり、UCSと大漢和辞典との対応テーブル。
Unicodeは、漢字関連のさまざまな情報を集めた、Unihan Databaseという巨大な情報群を持っている。
詳細は、Unicode.orgご本家のホームページを参照していただくこととして。
[https://unicode.org/charts/unihan.html]
ところが、ここに含まれている大漢和辞典とUCSとのマッピングテーブルは十全なものではない。カバーしている範囲がかなり少ないのだ。そこで、文字情報基盤の情報の出番ということになる。
文字情報基盤の文字情報一覧表には、それぞれのMJ文字図形に対応するUCSの符号位置とともに、日本の代表的な大型漢字辞典の検字番号との対応表が記載されている。もちろん、諸橋徹次の大漢和辞典の検字番号も記載されている。ということは、MJ文字図形名を媒介としてUCSと大漢和辞典の対応関係が取れる、ということだ。ユニコードコンソーシアムが欲しがっているのは、まさに、この対応テーブルというわけ。
ところが、以前の会長ブログでも触れたことだが、文字情報基盤の文字情報一覧表には、MJ文字図形名とUCS符号位置の対応関係には、すでにいくつか改訂すべき個所が見つかっている。当然、大漢和辞典の検字番号とMJ文字図形名との対応関係もきちんと見直さなければならない。
それよりも何よりも、MJ文字図形が大漢和辞典のすべての見出し字をカバーしているわけではない。
そんなわけで、Unicode Consortiumとの契約は締結されたというものの、この契約を実施に移すには、まだまだやるべきことが山積というわけ。やれやれ。

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